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2008年11月20日(木曜日)

ついに登場、ポケットプロジェクタ3種!

カテゴリー: - spiky @ 12時19分50秒 このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをTagClickに追加

 

1977年にSFXを駆使した映画「スターウォーズ」が公開されたとき、R2D2が映し出すレイア姫のホログラムを見て、「まぁ特撮だから」という気持ちと、「いつかこんな装置ができたらいいなぁ」と、遠い未来のことだと感じていた。(※日本公開は1978年)

例のあれである。

 "Help me Obi-Wan Kenobi. You’re my only hope.”

 (助けて、オビ-ワン ケノービ!あなただけが頼りなのです!)

 

しかしそれから30年がたち、ホログラムではないもののどこでも映像を投影できる小型のプロジェクタがついに商品として登場した。

 

現在、商品として購入できる(あるいは近日中に購入可能な)のは以下の3つである。

  1. OptomaポケットプロジェクタPico(販売:アップルストア、オーエス)
  2. 3M 手のひらプロジェクタ MPro110 (販売:住友スリーエム)
  3. 海連 手のひらプロジェクタ X Pro920M (販売:有限会社海連)

なおEPSONもこんなのを発表しているようだが、ドラえもん以外の一般人のポケットには到底入らないと思われるので、却下。

現在公開されている情報から比較した表が下記。

Pico MPro110 X Pro920M
メーカ Optoma 3M 海連
値段 5万円以下 56,490円 39,800円
発売日 アップルストアにて先行予約11/20より、全国のアップルストアで12/1より先行販売、12/19より一般販売 発売中 2009年1月中旬より
サイズ 105 × 51 ×17 [mm] 115 ×50 ×22  [mm] 90 ×44 ×80 [mm]
重さ 120 [g] 160 [g] 190 [g]
光学系仕様

米TIが開発した超小型DLPチップセット「DLP Pico」採用

480×320ドット

6型(投射距離0.15m)〜66型(同2.63m)

LED光源のLCoS方式出力640 x 480解像度(入力は1024×768まで対応)の映像を対角8型 〜 48型サイズ(距離 305-1800mm)

VGA, SVGA, XGA

 

 

入力解像度1024×768, 出力解像度640×480

コントラスト比 1000 : 1 ? 100 : 1
明るさ 10 [ルーメン] ? 10 [ルーメン]
入力仕様 ? NTSC, PAL, NTSC(M), PAL(BGHI) ?
映像入力 コンポジットビデオ(ミニ端子)と、アナログ音声(2.5mmステレオミニ)。

コンポジット
VGAのビデオ端子

D-Sub 15Pinとコンポジット映像入力
音声入力 アナログ × アナログ
電源

リチウムイオン電池

DC電源

ファンレス

リチウムイオン電池(充電式)

DC電源

ファンレス

DC電源

ファン付き?

電池駆動 ○(連続2時間) ○(時間不明) ×
特徴

・いまのところ最小
・スピーカー内蔵
・内蔵バッテリ交換可能
・予備バッテリ付き
・ミニ脚用交換ねじ付き
・USBにて充電可能
・2段階輝度調整可
・入力端子がコンポジットのみ
・出力解像度低い

・三脚用ねじ穴つき
・バッテリ駆動可能(時間不明)
・レビューによると作りがちゃち
・左右反転表示(裏から投影のため)可能
・モノスピーカ内蔵
・Mini AV / RCAケーブル付属
・三脚付属
・コントラスト比低い
・バッテリ駆動できない
備考 主としてiPod Touch, iPhone用か?(iPod, iPhone専用ケーブルが付いている模様) PC接続用の持ち運びプロジェクタとして適している。 同社製品「サインはVGA」と組み合わせてスマートフォンでのppt, pdfなどのプレゼン可能(※VGA端子があれば、別にこれでなくても良いような)

 

3製品の比較

 いまのところすぐに買えるのは、本日よりアップルストアにて予約開始となっているPicoと、すでに売り出し中の3MのMPro110である。ポケットプロジェクタは持ち歩く用途が前提であると考えるので、できれば電源の無いところでも駆動するほうが、これまで想像も付かなかったシーンでの利用が可能になるという点で○。そういった意味で、僕的に意味があるのは、PicoとMPro110か。海連のX Pro920MはDCアダプタのみでの駆動なので、確かに小さいのだがモバイルシーンでの活用という面で魅力が半減する。

 ということで、持ち運びできるプロジェクタという面からみると、最も軽く小さいPicoに軍配があがると思う。フットプリント的には3MのMPro110もかなり小さいのだが、それでなくても非常に多くのガジェットを持ち歩いている身としては、軽いことに加え、より「薄い」方が助かる。ただ薄くなるということは、光学系(DLPやレンズなど)も小さくせざるを得ず、基本的な投影機能の面で譲歩する必要が出てくることは認識しておく必要があるだろう。

 

 基本的なプロジェクタとしての性能を見てみると、最も性能が良いのは、3MのMPro110。ポケットプロジェクタの中では、最大の1024×768の入力まで扱え、出力も640×480である。また、コントラスト比も1000:1と高いほうになる。同じ解像度である640×480に対応している海連のX Pro920Mはコントラスト比がMPro110の1/10の、100:1しかない。またサイズ的にも小さいとは言いながらも、ずんぐりむっくりとした大きさがカバンの中での収まりを悪くしている。

 

 いずれも昨今普及してきたデスクトップタイプのプロジェクタに比べると圧倒的に性能が劣るが、一方でプロジェクタを常に持ち歩ける、バッテリ駆動でも動作できるという面で、これまで活用されてこなかったシチュエーションでのあらたなニーズによる市場の拡大が見込めると考える。最終的には購入者がポケットプロジェクタに何を求めるかによって選択肢は変わってくるが、僕的にはプレゼン・DVDや映像の鑑賞といったところなので、パワーポイントでのプレゼン時の解像度を考えると、やはり640×480あるMPro110かな。バッテリーの持ち時間が公表されていないのがちょっと気になります。またバッテリーの交換はできないようなので、バッテリーがきれたら専用のDCアダプタにて充電するためにコンセントを探すことになりそう。少し解像度の点で譲れば、そつなく良いのはPicoの方。なんていってもバッテリーが交換可能な上に、予備バッテリーが標準で添付されているというのも心強い。スピーカも付いてるし、最近の音声つきプレゼンでもなんとかいけそうな気がするし。

 しかしPicoの解像度、完全にiPod, iPhoneと一緒になっているという点、やはりiPod TouchやiPhoneでの利用を念頭において販売を決めたような気がする。フットプリント的にもiPodにかなり近いしね。ソフトバンクのワンセグ&外部バッテリーパックも同じフットプリントなので、カバンの中で収まりがよさそうに思う。

 

ポケットプロジェクタの今後

 さて、これで終わってしまうと、その辺のIT系サイトのまとめ記事と変わらなくなってしまうので、僕なりの見解を述べようと思う。今後、どんどんとポケットプロジェクタの製品が増えて、新しい市場ができてくると思う。もちろん、民生市場でもそれなりの需要があると思うが、僕はむしろ産業分野での潜在的ニーズが非常に多いのではないか、感ずるのである。

 産業分野では、製造業の生産現場がある意味いまだにIT化されていない最後の聖域となっている。しかしものづくりの最前線はやはり現場であり、営業や設計などの上流工程と、この最前線とがICTによって完全かつシームレスにつながれてはじめて、情報化時代の恩恵を最大限にうけた、ロバストでアジャイルなプロダクションループが完成するのである。上流系のICT化については、もういやというほど様々な取組みがなされてきており、ユーザの選択肢も多い。

 しかしながら一方で、生産現場でまともに使えるICT系製品の選択肢はまだまだ足らない。

 少なくとも、空調の効いたビルの机に四六時中へばりついている人たちが使うことを前提とした、デスクトップをメタファとしたICT製品、つまりはコンピュータなり、OSなり、しか未だにない状況を見れば、それは明らかだ。しかしながら今後は、そういった現場系、それも現場の事務所で使うのではなく、極端な話、溶接をしている現場だとか、基礎工事でコンクリートを打っている現場までICTによって製造情報を流し、吸い上げる必要がある。そのための仕組みはまだまだ足らないし、そもそもが現場のアクティビティをメタファとしたOSなり、コンピュータなりがいまだ登場していないのが実情である。

 

 例えば現場端末では北米で9割以上のシェアを誇るPanasonicのTouch Bookにしたって、ハードウェアは確かに相当にタフで現場向きであるが、現場の作業員はべつにTough Bookで釘を打ったりねじを締めたりするわけではない。現場でのこのような作業を情報支援してくれるようなやりかたで情報を取り出し、目の前の対象物に働きかけたいのである。そんな場面にGUIなど必要ない。ましてやWindowsなど全く持って不向きである。

 

 手に持っている端末上で、移動しながら、あるいは不安定な状況で、非常に細かい画面上のポインタを、これまた小さな領域にジャストミートで移動させることがいかに困難な作業であるが、現場に出ないプログラマの多くは知らない。現場には現場のリテラシーがあるし、それに沿った情報機器が必要なのだ。

 

 さて、現場画必要とするものの中で、やはり設計図面や施工図面というものは非常に重要度の高い情報の一つだろう。しかし図面というものは、殆どのケース、30inchのサイズのモニターであっても全てを表示することはできない。これに加えて、チームで作業をしていたりすると、折に触れて複数人でこの情報を閲覧したいケースがあるが、いまのモバイルデバイスの標準的なサイズである8inchやそこらの画面にA0(ゼロ)の図面など出しても何がなんだかわからない。やはり「ばさばさっ」と広げて、同じ作業チームのメンバで一緒に見たいのだ。従い、この問題はモバイルデバイスの物理的画面サイズを大きくすれば良いかというと単純にそういう問題ではないし、またユーザインタフェースの工夫(たとえば拡大・縮小をスムーズにさせるズーミングインタフェースを設けるとか)でどうなるレベルのものでもない。現場にこのようなモバイルデバイスを持ち出して思うのは、

 

 「あぁ、ここの壁にこの図面(あるいは部品リストとか、施工手順図とか)を表示できたらなぁ」

 

ということだ。

 

 そういった用途に実はこのポケットプロジェクタは非常にうってつけなのである。いまは現場の特定の区画にパソコンとプロジェクタを設置し、必要に応じてそこで図面を表示したりというトライアルをやっているケースもあるが、あまり現実的でない。たとえば工事現場から、この場所に戻ってくるのに数十分かかるようなケースなどざらだ。従って、まさに作業をしているその場で見れなければ意味が無いし、活用されない。そんなときにモバイルデバイスと、このプロジェクタがあれば、(屋外ではいまのところ、周りが明るすぎて無理だとしても、なお)使える現場は無数にある。設計でついさっき変更されたばかりの図面情報をものづくりの最前線で確認できる、というのは作業の手戻りを防ぐし、作業ミスも減る。

 

 そういったニーズだけでも無数にあるので、産業分野ではすぐにでも配備したい道具の一つとなるだろう。

 

 しかしながら、プロジェクタとしての基本性能の今後の向上のみならず、先ほど述べた現場のリテラシーというものも、このプロジェクタにおいても慎重に考える必要がある。例えば、プロジェクタは「どこかに設置して、映像をぶれさせない」という暗黙の前提のもと設計されている。家や事務所ならば、机の上に設置すればその要件は満たされるわけであるが、現場では基本そういった形でプロジェクタをどうやって固定するのか、あるいは固定する場所が無いときに、どうやって投影された画像を安定させればよいのか、という点ではたと困ってしまうことになる。

 例えば、プロジェクタ側にマグネットを内蔵し、また様々な平らでない場所、たとえば階段の手すりとか、H鋼のヘリの部分などに固定するためのクリップなりを標準でつけておく必要があるだろう。現場には鉄でできた場所やものがたくさんあるので、クリップが使えない場合はマグネットで固定すればよい。しかしそうなると、モバイルデバイスをどうするか、という話になる。モバイルデバイスは持っていても、置いてもよいが、プロジェクタとの距離と接続方法を考えておく必要がある。基本、モバイルデバイスは身体につけている(ポケットに入れていたり、ベルとクリップでとりつけていたり、あるいははたまた手に持っていたり)ことを考えると、巻き取り式のケーブルとか無線化が必須となるかもしれない。無線化が可能なのであれば、現場に無線インフラがあるとするならば、データは直接プロジェクタに送って、モバイルデバイスを不要にすることもできるだろう。

 

 またプロジェクタを固定するためのいかなる方法も見つからない場合は、手に持って投影する必要があるだろう。将来的にはプロジェクタそのものがモバイルデバイスに組み込まれるケースもあるだろうし、安全ヘルメットにカメラとともに埋め込まれるケースもでてくる。そうなると問題は、プロジェクタが始終動いている、という点だ。当然映像もゆれる。そこでひつようとなるのが、現在のデジカメなどではあたりまえになっている手ぶれ補正機能である。また手に持つ場合は水平を維持するのも大変かもしれない。そうなると昨今の携帯やiPhoneなどでメジャーとなっている、筐体の傾きを検出するための6軸センサーを組み込み、ある程度の傾きに対しては、画像を回転させ、台形補正をかける、などのメカニズムが必要となってくる。

 

 これらの機能それぞれは昨今では珍しいものではないが、それがプロジェクタに使われているケースはいまだない。

 

 そして最後に、耐環境性である。現場の作業員が事務所から毎日持っていく懐中電灯や無線機の壊れ方は、それはもう悲惨なものがある。趣味でアマチュア無線などをしているユーザがみれば、卒倒するだろう。したがって相当な耐衝撃や耐振動対策が必要だ。また防滴、防水も必要かもしれない。引火性の物質を扱う場所においては防爆仕様にするひつようもあるだろう。放射線をあつかう現場では、放射線により誤作動をしないようプロジェクタをシールドする必要があるし、唯一レンズの部分には通常のシールド方法が使えないので、透過性を維持しつつ放射線を通さないような技術も必要となってくる。

 

 とまぁ、このように現場で必要とされるような要件を並べ立てると、現状ではじめたポケットプロジェクタは全くもって十分ではないが、しかし技術的に不可能なわけではない。やがてこのようなプロジェクタが様々な現場機器に内蔵されたり、耐環境性が向上される見込みは十分にあり、現場におけるICTの活用を加速し、生産性の向上や安全性の向上に大きく寄与する望みは小さくない。

 

 ポケットプロジェクタは今後が非常に楽しみなガジェットである。

 レイア姫のホログラムメッセージを受け取れる日はまだ少し先になりそうだが、平面でよければ今すぐにでもジェダイの騎士の気分は十分に味わえる。帝国が攻めてくることを心配して、日夜フォースの訓練に励んでいる人たちにはぜひ最初に買ってもらいたい製品だ。


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