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2007年12月12日(水曜日)

OLPCにまつわる酷いデマ

カテゴリー: - spiky @ 11時21分50秒 このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをTagClickに追加
先日ワークショップの際に、ある方から、あらたにOLPCについて
誤解に基づいた酷い記事が出ているという話を聞いていました。

週明けて心に余裕が出来たのでちょっと覗いてみました。

 

http://www.gizmodo.jp/2007/12/olpc.html

いや、ちょっとあまりに酷すぎる。
 
以前個人サイトで、同じレベルの酷い記事がありましたが、
それに勝るとも劣らない、誤解・誤訳によりデマまきちらす
酷い記事です。
 
Gizmodeという、ガジェット好きには購読者の比較的多い
ニュースサイトで、あちらこちらに記事を配信しています。
なので結構影響力が大きい。

 

記事にはすでにいくつかコメントがついていますが、この記事の
何が嘘で、何が誤解か、よしきさんが纏めておられるので、
比較して是非お読みいただきたいと思います。

 

 

僕はこのニュースに対して、2件のコメントをつけたのですが、
いまだに掲載されず。(編集部がチェックしてから、という
ことらしい)誹謗中傷の類ではなく、あくまで冷静に、批判を
した内容なのだけれども、デマをデマというと、さすがにそれが
本当でも他人が言うことは許せない、という感じなのかなぁ。
(いや、勝手な想像です)

 

承認には時間がかかると思い、記事の書き込み日時とその他の
方のコメントが掲載された日時から、だいたい1日まてば無視されたのか
内容吟味中なのかの判断がつくと考え、丸1日待ってみました。
 
 
今現在まだ2件のコメントは掲載されていないので、どうやら無視
されたようです。従いブログにこの状況を書くことにいたしました。

 

 
すでに個々の項目について何がどうなのか、という点は
よしきさんが書かれているので、僕は「情報鎖国」という点で
見てみました。
いくら多くの情報がウェブや通常メディアで流れているとはいえ、
殆どの人が見ているのは翻訳なわけで、翻訳ってのは、
 (1)何を訳すか、訳さないか
 (2)どう訳すか
の2つのレベルですでに恣意的なフィルタリングがかかる仕組みに
必然的になっています。

 

またいかにもカッコの良いニュースサイトに記事が出ると、つい
「あ、そうなんだ」と思ってしまいがちですが、基本インターネット
では誰でもこんな装飾をして記事をかくことができるのだ、という
点に注意が必要でしょう。見た目や周囲にちりばめられた権威的
広告は、情報の質とはなんら関係が無いのです。

 

このサイトの場合、それなりに読者層もあるわけで、全てが全て
これほど酷い記事ではないと思いますが、それにしても、この
記事、原文もちょっと酷いというのもあるのですが、さらに誤訳が
輪をかけてます。そして更に言えば、これに記されている私見も
誤解や無知に基づくあまりに勘違いな内容で、日々、日本人ボランティアと
して協力している身としては、あんまりすぎて悲しくなってきます。

 

さて、もう2点ほど。

 

2番目は、記事の文調がいかにも「対岸の火事」という感じで
書かれている点が気に入りません。ちなみにこの翻訳をされた
satomiさんという人は米国在住のようです。
(だから地理的には対岸ではないわけですが。。。)
次から次に「どうだ!」といわんばかりに間違った数字の引用
をして、「ほら、やっぱり失敗した」という書き方は、
個人的にも何かOLPCに批判的な感情をお持ちなのでしょう。

 

しかしですね、おそらくこの方は日本人。
で、僕の日記をご覧の皆さんは、僕を含め、他にも情熱を持って
OLPCを支えてきているボランティアの方々が日本にもいることを
ご存知だと思います。

 


また世界に視野を広げれば、その数は非常に多くなります。
つまりネグロポンテさん+何か良く分からない組織、が展開をしている
わけではなく、非常に本質的なところで、世界中の膨大なボランティアの
熱意に支えら、その日々の努力の上に成り立っている プロジェクトなのです。
(それが形になって見えるものの一つがOLPC wikiです)

 

自分の国籍である日本にも、ボランティアで頑張っている人が
いるんだ、ということを知っているならば、たぶんこんな書き方は
出来ないだろうと思うわけです。
(認知度を高める活動が、だからまだまだ足らない、ということの
裏返しでもありますが)

 

そして最後に。

 

記事の最後、ネグロポンテさんの「たとえXOが売れなくてもOLPC
としては成功だ」という言葉尻を捕らえて、高価なラップトップ
市場の価格破壊をしてくれた功労者、という見方をしています。
たとえば国内ADSL市場の価格破壊によって普及の促進に貢献した
Yahoo!BBやSoftbankをたたえるかのように。

 

でもこれまでいろいろとOLPC関係の情報に触れてきた僕が思うに、
ネグロポンテさんの真意は、そういう価格破壊に貢献できたので
嬉しい、ということではなく、多くのPCメーカが企業努力に
よって値段を下げて、予算の乏しい開発途上国の選択肢が増える
という直接的な効果に加え、もともとの「教育プロジェクトである」
という点に翻ってみると、これを支えるソフトウェア(これが肝心!)
は一般的なPCアーキテクチャであればどれでも走るように、
また走らなければ誰でもいじれるように、オープンかつフリーで
作られているがゆえ、極端な話XOでなくても様々なハードで
走らせることが出来るわけです。
(たとえばEtoysはそうですね)

 

ということは、低価格なXOが呼び水となって、より多くの開発途上国
の子供たちに、構成主義に基づく学習環境が広がる非常に貴重な
きっかけを生み出せたというわけで、だからこそ、「たとえXOが
売れなくても、それはそれで成功」なわけです。

 

OLPCは、あくまで教育プロジェクトなのだ、という点はそこにあります。

結果として達成すべきは、より多くのガジェットを安く市場に投入する
ことではなく、より多くの学習の機会から遠ざけられている子供たちに
学習の機会を提供する、ということなのです。

 

ということで、この記事の最後の結論も、大きな読み誤りをしている
ということがいえるでしょう。

 

ほんとに酷い記事です。
 
追伸:
この日記を登録した瞬間に、昨日ポストした2件のコメントが掲載されました。
単なる偶然としてはあまりにタイミングがばっちりなので、とても気持ち悪いです。

 

追伸2:
邦訳へのコメントは、それはそれで日本の読者への注意喚起の意味で大切なのですが、
原文にもコメントしました。「世界中のボランティアを敵に回してるぞ」という意味で(笑)


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2007年10月26日(金曜日)

新世界を汚染するマイクロソフト

カテゴリー: - spiky @ 18時44分40秒 このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをTagClickに追加

マイクロソフトはひっそりと新たな市場を目指し、これまでコンピューターなどとは無縁だった開発途上国の多くの子供たちの頭を汚染しようとしている。

 

マスコミには"100ドルPCプロジェクト"のほうが名前の通りの良い、OLPCプロジェクト。
OLPCとは"One Laptop Per Child"の略である。米国マサチューセッツ工科大学
メディアラボ創設者、Nicholas Negroponteが代表を務めるNPOであり、世界中の
(そして当面は開発途上国の)教育の機会から遠ざけられている子供たちに、あまねく
学習の機会を提供することを目的として活動をしている団体である。

 

当方もその素晴らしい活動趣旨に賛同し、微力ながらOLPC wikiの翻訳ボランティア
として協力させていただいている。

 

本題に入る前に、大事なことを記しておきたい。マスコミ、特に日本で報道されるOLPC
関連のニュースは、とかく"驚異的に安いノートパソコンを作っている慈善団体"といった
雰囲気でニュースを流すことが多く、折を見てははたして確約どおり100ドルで、まと
もに使えるPCを作れるのか?できあがりつつあるのか?といった視点ばかりが目立つ。

 

しかしNegroponteがたびたび口をすっぱくして主張しているように

 

「OLPCはラップトップ(開発)プロジェクトではない!
 教育プロジェクトである。」

 

という趣旨がいまだによく理解されていないというのは残念である。

 

従い、OLPCの100ドルPC"XO"(※この2文字を左に90度回すと、子供たちをあらわす
シンボルとなる)をちまたの電気屋さんで買えるパソコンメーカのノートパソコンと
比較するのは大きな間違いである。

 

(ちなみに、XO自身は安いだけでなく、最新の技術が投入された、次世代の情報端末
といっても過言ではないくらい素晴らしいマシンである。)

 

OLPCは一般にこのPCを先進国の街中のショップを通して販売する計画はなく、
販売先はあくまで「国」である。OLPCプロジェクトに賛同する政府が自国の子供たちの
分を一括して購入し、無償で配布することことを想定している。OLPCはあくまで
教育プロジェクトであって、LOGOで有名なSeymour Papertの「構成主義
(connectivism)」という教育理論を基礎とする、子供たち自身の知的探究心を
活性化し、「学ぶことを学ぶ」スタイルで自ら学習を進めるうえで必要となる道具
としてXOを準備している。XO自身は単なる道具でしかなく、XOには、この
「学ぶことを学ぶ」ためのソフトウェアを準備する作業もXOのハードウェアと平行して
進められているが、それについて触れるマスコミは殆ど無い。例えば代表的なもの
としては、"Squeak(スクィーク)"が上げられる。

 

Squeakは、かの"パーソナルコンピュータの父”として有名なAlan KayのSmalltalk
から派生した処理系で、現在はAlan Kayが代表を務めるNPO, “Viewpoint Research
Institute"が開発を進めている。

 

さて、このOLPCが目指す、教育の新世界には非常に多くのコンピュータ業界の争いとは
無縁な無垢の心があり、その潜在的市場規模は膨大である。(開発途上国の子供たちが
学び、十分な発展を遂げ、先進国の仲間入りをする頃には経済活動も活発化し、行き場を
なくしている多くのプロダクトの新たな市場となるという意味において)

 

当然のことながら、長期的視野に立てば、情報産業(に限らないが)としては非常に魅力的な
潜在市場である。先進国のユーザやメーカの一喜一憂とは無縁のこの大きな市場を
初期の段階で抑えられれば、OSのようにちょっとやそっとでは途中で変更しにくいプラット
フォームなどはデファクトスタンダード化し、長期にわたる収益源となる。

 

最近マイクロソフトはその潜在的市場規模の大きさ(そしてその波及効果)に気が付いたようで
急速にOLPCへ接近しつつある。

  100ドルノートPCのWindows版登場へ

初期バージョンのXOには、コンパクト化されたFedora Core Linuxが搭載され、子供たちは
その上で稼動するSugarというインタフェースを通して学習活動を行う。
Sugarのインターフェースとしての良し悪しには議論のあるところであるが、
しかし先進国のガジェット好きが関心のあるようなきらびやかさはないものの、シンプルで
必要十分ではないかと感じている。

 

この10月から本格的なXOのプロダクションが始まり、初期ロールアウト先の各国に配布される
のは、このLinux版である。この開発をささえるのは、オープンソース世界と深く関係している
メーカ、およびOLPCの趣旨に賛同する世界中のデベロッパーである。しかし今後の需要の高まり
を考えると、少しでも多くのリソース、お金、技術、人が必要で、営利・非営利組織にかかわらず
その参加は歓迎すべきものだと考える。

 

しかしそれが、現在世界中の知的労働者の作業時間を浪費し、あまつさえ精神的障害を生み出して
いるWindowsというOSを作っている会社となると話は変わってくる。

 

マイクロソフトがOLPCへ接近し、XOへ搭載可能なコンパクトなOSを開発している背景には
当然のことながら、いまだ手つかずの市場を早い時期にWindows色で染めておきたい、
という意向が働いていることは容易に想像が付く。

 

ただでさえ、わずかA4、1枚の資料を作るのに半日も費やさねばならない、酷いデザインと
バグてんこもりのWindowsによって、先進国の産業力を大幅に低下させることに成功して
いるマイクロソフトである。営利企業が市場原理の中で、その選択を誤り収益を悪化させる
のは直接的には個々の企業のマネージメントの問題である。しかし、初等教育に用いられる
基本教材の一部にそのような病原菌が混ざっていると、非常に問題だ。

 

OLPCがターゲットとするのは年齢にしてだいたい6歳から12歳の初等教育対象者である。
初等教育が、その後に続く中・高等教育と決定的に違うのは、この時期にその人の本質的な
価値観が形作られるという点にある。従い「人間の安全保障」を提唱するインドの経済学者、
アマルティア・センが主張するように、この時期の教育は思想的に努めてニュートラルな形で
あまねく実施することが必要であるということで、OLPCが提供しようとしている学習の機会を
形作るあらゆる要素も慎重に配慮して取り入れられるべきである。

 

そういった面で、これまでLinxuをコアとし、各種アプリケーションが「オープンかつフリー」
で開発されてきたことには大きな意味がある。

 

しかしながら、明らかに商業的魅力にインセンティブを有し、本質的な教育理念を果たして
きちんと理解して設計しているのかどうかさえわからないマイクロソフトのようなメーカが
提供するOSをXOに搭載することは、本質的に子供たちを誤った方向に導く危険性が
あるように感じる。

 

マイクロソフトが狙っているのは、今のうちに純粋無垢な子供たちに、「Windows(的なもの」
に触れてもらい、将来的にWindowsの購入者になってもらうことである。マイクロソフトの
ように、資金力も豊富で、高い技術力と開発能力を持つメーカの参入を危惧せねばならない
というのは非常にジレンマでは有る。

 

望むべくは、マイクロソフトがこれまでパッチにパッチ(修正用のプログラム、という意味ではなく)
を重ね、もはや原型がなんであってどう修正すればよいのかわからないようなカオスの塊の
エッセンスをコンパクト化したものを開発しているのではなく、真に「学ぶことを学ぶ」力を
活性化できるように技術を駆使し、全くゼロから真に良いコンパクトなOSとユーザインタフェース
を生み出してくれることを願うばかりである。

 

いまのところ、「2,3ヶ月はかか」ったあとに出てくるであろうMS版OSを搭載したXOが
はたしてWindows的なものか、あるいはそうでないのかについては何の情報も無い。
引き続きワッチし、慎重に判断をしていく必要が有る。マイクロソフトが企業としての価値観
からではなく、世界を救う未来の世代の子供たちに、真に必要なものはなんなのか?という
スタンスで開発を進めてくれるよう期待したい。■


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2007年8月30日(木曜日)

次世代のインタフェース

カテゴリー: - spiky @ 10時58分49秒 このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをTagClickに追加

 

OLPCサイトの翻訳作業を続けています。

昨日はOLPCの"XO"というパソコンに搭載されている、"Sugar"というユーザインタフェースの部分の翻訳を完了しました。

「Sugarを使ってみよう」

XOの開発ターゲットは開発途上国の初等教育対象の子供たち、6歳〜12歳くらいのコンピュータリテラシの十分でない子供たちが、自分たち自身が持つ学ぶことを学ぶ能力を最大限に引き出すための道具とすることです。従って、先進国の同世代の子供たちになじみの深いOS、MacOS XやWindowsなどではなく、もっと直感的に操作できる必要があります。XOはこのへんに配慮し設計されており、非常にユニークなインタフェースを備えています。

注意が必要なのは、単純にちまたのこういったOS類と比較してはいけない、ということです。上記のとおりこれを使う子供たちは、昨今の子供たちがあたりまえのように持っているコンピュータに関する知見がありません。そういった子供たちが、直接的に「学ぶことを学ぶ(Learning learning)」のを手助けするために、コンピュータそのものの操作はシンプルで直感的、かつ透過的でなければいけません。

 

またこのSugarが走るXOというパソコンは、普通の人がPCを使っている利用環境とは全く異なる劣悪な環境であり、その環境に適合するよう特別に設計されたハードウェアなので、ハードウェアリソースという観点からも十分な配慮がなされて設計されているものです。特に配慮されているのは以下の3点です。

  1. 低消費電力
  2. 太陽光下での視認性
  3. (ネットワークへの)自動接続機能

例えばXOには128MBのメモリと、512MBの(フラッシュメモリによる)内蔵ストレージしかありません。CPUに関しても昨今のGHz代のマシンとは異なり、とにかく低消費電力、コストの面から433MHzの AMD Geode LX-700というチップが使われています。より詳細な仕様については以下をご覧下さい。

 XOパソコンの仕様

話がとんじゃいましたが、Sugarの画面イメージを以下に載せておきます。Dockもなければ、Startもありませんね。この画面に表示されているものは、子供たちが学ぶ世界をメタファとしたものです。真ん中のアイコン"X0″(まさにこのPCの名前でもあります)は子ども自身を示します。

またその周りのリングには、子供たちの学習活動(を示すアクティビティと呼ばれる起動中の各種アプリケーションのアイコン)が配置されます。

Sugarには表示モードとして以下の3つがあります。

  • ホームモード (Home Mode)
  • お友達モード  (Friends Mode)
  • ご近所モード  (Neighborhood Mode)

このページの先頭付近のスクリーンショットはホームモードのものです。これをご近所モードに切り替えると以下のような画面になります。XOと近所のXOが表示されます。まるで子供たちが遊ぶ校庭みたいですね。

そう、OLPCが目指すのは、現在の正規の学校教育とは異なる、バーチャルな環境を利用したもうひとつの教育環境の構築なのです。これらは競合するものではありません。XOやXOで動く様々なアプリケーション(”アクティビティ”と呼びます)は、Linux, MacOS XやWindowsでも走らせることができますので、是非挑戦してみてください。

http://wiki.laptop.org/go/Emulating_the_XO/lang-ja


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